臨床心理士(りんしょうしんりし)は「公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会」が主催する民間資格です。
最近では職場や学校・家庭で心に病を抱える人・心理的な悩みを抱えている人が増えてきていることもあり、臨床心理士の果たす役割が社会的に注目を集めるようになってきています。
世間には「カウンセラー」「セラピスト」などのさまざまな名称で、こういった人の心理面にかかわる仕事をしている人も世には多いですが、「心の問題」にかかわる仕事は、プロとして成り立つ一定水準の専門的な知識や技能をもって行われているかどうかを客観的にはかることが、とても難しい分野です。
日本臨床心理士資格認定協会は、心理臨床に関連のある16の学術団体(学会)を母体に設立され、臨床心理士の資格審査を適正に行うことを中心業務とする組織です。
資格取得後も5年ごとに、研修を伴った資格更新審査を実施しています。
一からきちんと臨床心理分野を専門的に勉強したい場合は、やはり臨床心理士の資格取得が最適といえるでしょう。
臨床心理士は、心の健康がなんらかのかたちで損なわれている人に対して、投薬に頼らずに、「臨床心理学的技法」を駆使して、いまの状況を改善する手助けを行うものです。
(「臨床心理学的技法」とは、面接や心理カウンセリング・心理テストの実施・精神分析や行動療法といった、さまざまな臨床心理学的アプローチの総称です。)
なお令和4(2022)年4月現在で、39,576名の「臨床心理士」が認定されています。
高度化する現代社会のなか、さまざまな理由で自分を見失い、心の問題に苦しむ人が増えています。
不安定な雇用条件や職場での不適応から生じるうつや心身症・高齢者の生活上の孤独感・犯罪や事件の続発にともなう社会不安の高まりなどを背景に、なんらかのかたちで心を病む人がますます増えそうな見通しです。
日本がこの先健全な社会であり続けるためにも、本来ならばもっと力を入れてしかるべき一人一人の心のケアを行うための社会的・人的インフラ整備は、経済優先の風潮にあって、今後ますます心もとない状況になりそうです。
本来、会社勤めや家族の問題に長年向き合い、さまざまな社会的経験を積んだ中高年世代の方こそ、臨床心理士の資格を取得し専門性に磨きをかけることによって、バランスのとれたすばらしい「心の専門家」になる素地を有しているはずです。
臨床心理士の資格自体がまだ歴史も浅いため、これまでの社会経験そのものが、実務能力を磨くためのひとつの武器となるからです。
臨床心理士資格の取得には、大学院修了を含めた2~3年程度の期間と、そのための費用が必要となりますし、資格取得後も研修や研究などが義務づけられます。
また、少なくとも現在のところは、臨床心理士資格の取得が就職や転職に特に有利になるということはない、と考えておいたほうがよいでしょう。
これ一本で食べていくための資格としては、かなり厳しいと言わざるを得ません。
(この分野に興味はあるものの、時間的・金銭的にそこまでパワーを割けそうにない‥という方には、先に「心理学検定」や「傾聴」関連の資格の取得をおすすめします。)
ただし、臨床心理士を必要とする分野のすそ野は、将来的に拡がりをみせていくものと思われます。
文部科学省が不登校やいじめ対策として現在進めている「スクールカウンセラー制度」にもとづきカウンセラーを派遣する場合は、臨床心理士などの資格者であることが必要とされています。
福祉施設や介護施設で臨床心理士を置くところも、徐々に増えてきています。
経験を積んだ後は、独立してメンタルクリニックを開業するという選択肢もでてくるでしょう。
たとえば、社会福祉施設や企業の経営に長年携わってきた方のなかには、臨床心理士の資格をとるべく大学院にあらためて入り直す人も、決して珍しくないそうです。
人生の折り返し地点にたってその後半期を迎えるにあたり、「人のこころ」「こころのケア」というものをきちんと腰を据えて勉強してみよう...と考える中高年世代の方にとっては、今後検討する価値のある資格のひとつです。
・ 「臨床心理士」資格試験
【試験日】 (1次 筆記試験)10月上旬(2次 口述面接試験)11月上旬
【受験資格】 受験資格 を参照
【合格率】 65.4%(令和3年実績。「臨床心理士」資格取得者の推移 を参照のこと)
【問いあわせ先】 公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会