以前から業況悪化が進んでいた不動産業界は、世界的な金融危機が拍車をかけてその冷え込みが急速に進んでおり、上場企業ですら、すでに何社も倒産している状況です。
さて、2000年に入ってから宅建(宅地建物取引主任者)をはじめとして人気が息長く続いていた「不動産関連資格」のひとつに、中高年の受験者も多かった「マンション管理士」がありました。
しかし、肝心の不動産業界の先行きが明るくないこともあり、すでにそれも下火になりました。
日本をとりまく経済・事業環境がめまぐるしく変わるにつれ、いわゆる人気資格の移り変わりも、そのスピードが増しているようです。
昨年までの人気資格が急速に受験者を減らしたり、あるいは逆に急激に受験者が増え脚光を浴びた資格もあります。

たとえば2009年4月以降は実質的に廃止された「介護ホームヘルパー3級」のように、法改正や行政の方針にもとづき資格そのものが無くなってしまう(あるいは上位資格に統合される)ケースなども、今後は増えてくるかもしれません。
またたとえば、現在はひと頃ほどの人気はないものの、いまだ需要の続くUSCPA(米国公認会計士)。
この試験も、会計ルールや監査手続などは米国の政治・経済的時勢の変化に伴って絶えず大きく修正が入るでしょうから、5年もすると試験内容がかなり変わってしまう可能性もありますね。
世界や日本の大きなニュースがでた折などに、今後の受験者数の増減や、人気資格のトレンドがどうなってくるかをあれこれ考えてみるのもよいでしょう。
介護分野ではどうでしょう。
国は2007年11月の「社会福祉士及び介護福祉士法」改正により、介護業界において「介護福祉士」を中心的位置づけに据える方針を、すでに明らかにしています。
しかし、介護福祉士資格だけをとって介護とは関係のない業界で働いている、いわゆる「資格の死蔵者」がずいぶんいることはご存じでしょうか。
2005年に介護福祉士の資格を取得した約47万人中、実際に介護関連の分野で働いているのは半数強の27万人にすぎない、とされています。
苦労して介護福祉士の資格を取った後に、違う分野で働かざるを得ない人の気持ちは、いかばかりかと思います。
介護福祉士そのものについては、介護問題がますます重要となる情勢下、今後はステータスも高まる方向も確実なことから、実は中高年層におすすめしたい気持ちもあります。
しかし少なくとも現状では、中高年世代が過酷な長時間勤務に体力的・精神的にどこまで耐えられるかといった問題もあり、おすすめするのをちゅうちょするところもあります。
いずれにしても、現場において不満や悲鳴の声は限界に近づきつつあり、政府としても今の状況を、もはや何年も放置しておくことはできないでしょう。
そうなると、今後のポイントは、厚生労働省が将来的な介護福祉士の待遇改善に向けて思い切った手を示せるかどうかです。
5年後、介護福祉士の待遇などこの資格をめぐる環境変化がどうなっているかについて、自分なりに考えをめぐらしてみることです。
なお、当サイトでは以前、中高年世代向けの資格のひとつとして「ボランティア通訳検定」をおすすめしていましたが、主催者の「日本通訳協会」が2008年11月に突然、その閉鎖を発表しました。
不況が深刻化するなか、資格の取得を考える場合、今後は資格試験の実施機関・団体自体や受験のために通う専門学校の閉鎖・廃校なども、起こりうるリスク要因として考えていかなければなりません。
それにしても、大変な時代となったものですね。
さて、いくつかの資格を例にあげて、その移り変わりの激しさを見てきました。
中高年世代が資格をとるにあたり、それを転職・再就職・起業対策のひとつとしてとらえる場合は、やはり時代の先読みを自分なりにやったうえで、資格を選んでいく必要があるでしょう。
その場合、資格評論家や資格業界のいうことは参考にするにせよ、そのまま真に受けて行動していてはダメです。
彼らは、世間の評価の最大公約数を基準に語り、動くことしかできません。
資格評論家はその資格の「人気・不人気の理由」や「全体動向の分析」を中心に語りますし、資格予備校は、人気がでてきた資格を講座・コースとして自らのビジネスに取り込むのが、本道だからです。
中高年のあなたが、いま自分が置かれた状況のなかでなぜ資格を必要としているかについては、結局あなた自身でないと判断できないのです。
ただし、これからの社会のトレンドとニーズを読むことをよく踏まえながらも「現在の自分自身を形成するコア(核)の部分・そしていまの自分が置かれた状況に、もっともあった資格を選ぶ」という基本方針は、ゆめ忘れないようにしましょう(具体的な一例として、中高年におすすめしたい資格(15)~「管理栄養士」 をご参照)。
たとえ世の動向がどう移り変わろうと、自分がその資格を申し込んだときから人気がしぼんでしまおうと、よく自分自身に問うてなお「自分はこれをやるんだ」という強い思いがあるならば、その資格をとることに集中するほうが、最終的によりよい結果を生むものと信じます。
せんじ詰めれば資格の人気など、「かげろう」のように実体もつかみどころもないものですが、その資格をとりたいというあなたの思いは、何年もあなたの中で確かめることができるでしょう。
万一、もし10年後にその資格自体がなくなる可能性があるとしても、資格を得るまでの試験勉強で得た知識や受験技術はあなたの中に残ります。
あなたがその資格をとろうとしていた動機がしっかりしてさえいるならば、次の一手を考えるにしても、ずっと打ちやすくなるはずです。
なにより、いつの日か「あのときにやっておけばよかった...」という後悔を残すことが、精神衛生上もっともよくないのではないでしょうか。
「自分でよく考えぬいて選んだ資格」にチャレンジする決断を下したならば、合格を目指してまい進しましょう。