ごく一般の中高年層にとって、資格を取得してステータスが得られる時代・お金儲けができる時代は、もはや訪れることはないかもしれません。
規制緩和・行政改革の波を受け、国家資格として業務独占ができるような資格の新設は、すう勢としてもこれからはますます難しくなってくることでしょう。
いわゆる公的資格や民間資格は業務の独占権がない以上、世間が注目するような資格がでてきた場合、似たような内容の民間資格が乱立する可能性もあります。
加えて、民間資格はごく一部を除いて知名度に欠けるものも多く、苦労して取得したにせよ、就職面接や履歴書でアピールしたい武器としてはあまり役にたたないかもしれません。

中高年ともなると、「何の資格を持っているか」よりも、「その資格にもとづく実務経験がどれくらい深くあるのか」を、どうしても重点的にチェックされてしまうものです。
あなたがその資格を何のために得ようとしているのか、または得たのかを、あなたのキャリア形成のストーリーとして効果的に語ることができたなら、就職の面接官はあるいは納得するかもしれませんが。
いや本当はその前に、あなたが自分自身を納得させることが先決ですね。
お金と時間をかけ、あなたはいったい何のために、その資格をとりたいのでしょうか?
もし取得目的がはっきりしていて、取りたい資格も決まっているなら、その資格に対する需要がどれくらいあるのかについては調べましたか?
実は資格をとってお金儲けをすること自体は、今のシビアな経済環境でも、決して不可能ではありません。
ただし、相当なバイタリティと行動力が必要にはなります。
たとえば弁護士資格。
新司法試験によって、従来よりは取りやすくなっていますが、弁護士の供給過剰が指摘されています。
意見はわかれるところですが、十年単位のスパンで考えれば弁護士の絶対数が増えてくることは確かですので、特に競争の激しい都市圏では、資格をとったくらいでは今後ますますおいそれとはやっていけないはずですね。
大手事務所を除いて、これから弁護士で開業を志す人はみな、営業に飛び回り広告も増やし、案件の量をこなさなければやっていけないような大競争時代が、すでに到来しつつあります。
ただし地方にいけば、医師と同じく弁護士がほとんどいない(したがって競争がほとんどない)地域は、この日本にまだまだたくさんあります。
したがって、そういうところで開業して腰を落ち着けるなら、まだまだ余裕でやっていけるはずなのです。
さて、ここが考えどころですが、どうでしょうか?
試験合格後、いま住んでいるところから家族そろって片田舎に引っ越し、知り合いが一人もいないようなところであなたは開業してずっとやっていくことができますか?
あなたがためらいなくできるという人・それだけの自信がある人なら、何の問題もないですね。
あとは実行あるのみです。
皮肉でもなんでもなく、いまの自分の置かれた環境と照らし合わせて、自分には立ちふさがる困難を克服するエネルギーがみなぎっている、そのためなら日本中どこへでも行ってやる、あるいは成功するまで何年でもかける...という自信と展望がある方なら、いわゆる難関・大型資格をとって食べていくことは十分できると思います。
そういった野心溢れる方なら、新司法試験に限らず何の資格であろうと成功の確率そのものがぐっと高まるわけです。
しかしながらあなたが、体力も気力も20-30代に比べやや落ちかかっているごく平均的な中高年世代の一人なら、資格の取得で経済面の向上をめざすことの実現性と可能性についてよく検討するべきです。
たとえば年老いた両親がいて、将来は自分が面倒をみなければならないかもしれないなか、ここを離れることはできない。
あるいは、子どもの教育面で、塾もないような地域に行くのは将来不利になるかもしれない。
もしくは転居にあたって今の家を売却したいが、この不動産情勢ではしばらくは無理だ。
このように異なった事情やしがらみをなにかしら抱え、自分ひとりの判断で思い切った行動など、とてもできそうにない。
資格でもとってみようかと考えているごく普通の40代・50代としては、こういった人のほうがむしろ多数派ではないでしょうか。
「資格が、高収入や社会的ステータスを約束しない」のではありません。
資格をとったあなたが「現実のさまざまな制約下で、収入の増加に向けた行動をどこまで集中してとることができるのか」が、現実としては一番の問題になってくるのです。
中高年となった今のあなたにとって、これからの(あるいは残りの、といってもよい)人生でもっとも大事なテーマは、何なのでしょう。
そしてあなたがとりたいと思っているその資格は、そのテーマにどう関わってくるのでしょう。
その資格がどういう効果を及ぼすことを期待しているのでしょう。
そのために、あなたはその資格の取得に向け、果たしてどれくらいのお金を投下し、どれくらいの時間を試験勉強に費やさなければならないのでしょうか。
それは今、あなたが置かれているさまざまな制約条件のなかでも達成可能なことなのでしょうか。
もし難しい場合は、制約条件のいくつかを無くしていくことができるのでしょうか。
資格の本や雑誌に踊る「就職・再就職に有利」「収入アップ」といったフレーズに引きずられて勉強をはじめる前に、そういったことについて考えをめぐらせ、自分自身に対して説明できるようにしておくことは、とても大切なことだと思います。