これ以降のコラムでは、「とくに中高年におすすめしたい資格」を、独断と偏見にもとづき(笑)ご紹介していきます。
中高年 資格取得の視点(1)~(5)で述べたことを基本方針として選んでいますが、もちろんあなたにとっての「合う」「合わない」もありますし、勉強をはじめたときは有望そうに見えたが、後で振り返るとそうでもなかった...といったことも、当然起こりうるでしょう。
ご自身のこれまでの人生経験と自分の判断力を頼りに、あくまでも資格取得のひとつの参考として、以降の情報をお読みいただければと思います。
まず最初は、東京商工会議所が主催する「ビジネス実務法務試験」です。
毎日をごくふつうに暮らしているだけなのに、「自分に法律知識が少しでもあれば...」と肌身で感じるようなことに出会う機会が多くなってきている...と、ふと感じることはないでしょうか?
いまや高齢者をターゲットにした高額商品の訪問販売・資格商法・あるいは詐欺事件などが頻発するぶっそうな世の中、うかうかしていると大げさではなく、家族ともども身ぐるみはがれてしまいそうです。
会社員なら、不景気が深まるさなか、万一リストラや給与カット・配置転換などを迫られたりしたときに、誰に相談してどう対処したらよいのか。
行政書士や弁護士を頼ろうにも、それなりにお金のかかる話です。
少なくともどういう方向で考えていったらいいのか、法律面でみて会社とやりあう余地はあるのか...など、法的な視点で考えていけるのかどうかで、最終的に専門家に相談するにせよ、費用面を含め大きな違いが出てきます。
また会社員でなくとも「ネットオークションで詐欺にあった」「クレジットカード情報の個人情報が流出した」「子供の通う英会話学校が入学金を払った直後に倒産した」「独立して事務所を借りたが不動産屋ともめている」「田舎の親が介護施設を退去しろと迫られた」...どうやら24時間365日、呼吸をしている限りは、あなたやあなたの家族が法的トラブルから完全に無縁で生活することは、もはやできなくなっているようです。
「裁判員制度」も、まさにその象徴のひとつですよね。
好むと好まざるとにかかわらず、「ある程度の法的素養を身につけて、自らの職業生活と日常生活を自分の力で守る」ことが必要な時代にわたしたちが生きていることは、認めざるをえないようです。
このようななか、かりにサラリーマンを辞めたり商売から遠ざかったあとでも、つちかった法的知識とセンスが生きていく上でなにかと役に立つ、ビジネスに関わる法律を中心とした実践的な資格試験が、この「ビジネス実務法務試験」です。
1級~3級まであるのですが、特にはじめて法律に接する方は、やはり3級から順を追って、公式テキストと問題集を使いながら勉強していくのがよいでしょう。
なかでも1級は会社の法務部担当者などを受験対象として想定しているだけのことはあり、論述式でかなり手応えのある(難しい)、実戦的な内容となっています。
1級の受験資格は特にありませんが、会社で法務部に所属していなくとも、最終的にはぜひ1級をめざしてほしいものです。
なぜなら1級に合格するくらいのレベルに達していると、会社や仕事での商取引のいざこざや日常の法律的トラブルが起きたとき、具体的に関係しそうな法律や法律的な問題のありかなどを、自分の頭で整理立ててすばやく対策をたてることができる、いわゆる「法的センス」を身につけることができるからです。
また、1級をとった後は法的素養を持っているという自信もつきますので、その後はステップアップして司法書士・弁護士...など、さらなる難関資格をとって本格的な専門家を目指すこともひとつの選択肢になりますね。
商売をしていない方は「自分には関係ない...」と思われるかもしれませんが、自分が売り買いした相手方が会社組織であるだけで、民事でなく会社法の世界に入ってきます。
「ビジネス法務の知識」は、いまの複雑な高度経済社会を生きる人にとって、ぜひ身につけておきたい一生の財産となるはずです。
とりわけ商売上のトラブル・法的トラブルが起きたときなどに、基本的な法律知識をもっているか否かで、その後の対応に雲泥の差がでてきます。
そういった実戦的なビジネス全般に関わる法的素養を得られる資格として、いちばん最適と言えるのがこの「ビジネス実務法務試験」なのです。
認定証が発行される「準1級」も2008年(第24回試験)から創られ、不合格者の得点上位者を1級合格に準じ、「準1級」として認定しています。また名刺にも「商工会議所認定 ビジネス法務エグゼクティブ」(2級なら「ビジネス法務エキスパート」、3級なら「ビジネス法務リーダー」)とそれぞれ称号を記載できます。
ちなみに1級は2022年度から、CBT方式(全国各地のテストセンターに設置されたパソコンで受験する方式)の統一試験に移行されることにご注意ください。
また2級と3級はCBT方式に加え、IBT方式(インターネットを通じ受験者自身のパソコンで受験する試験方式)も用意されています。
なお、同じく法学の知識を客観的に評価することを目的に、法学検定試験委員会が実施(主催:財団法人日弁連法務研究財団・社団法人商事法務研究会)する「法学検定試験」という資格試験もあります。
こちらはより学問的というか、法律知識そのものを純粋に問う色合いがビジネス実務法務試験に比べてやや強いようです。
受験対象も主に法学部・商学部の学生などを想定しているようですので、中高年世代としては、先に述べたように法律を実際のビジネスや日常生活に強く活かす趣旨を重んじ、「ビジネス実務法務試験」をおすすめしておきたいと思います。
・ビジネス実務法務試験
【試験日】 【第51回】7月1日~7月19日【第52回】10月21日~11月7日(2022年試験日。IBT・CRT方式共通の日程)
【受験資格】 なし
【合格率】 1級 21.2% 2級 65.2% 3級 88.2%(2021年度 全国結果の合計実績)
【問いあわせ先】 東京商工会議所検定センター