「美術検定」は、2003年から実施されていた「アートナビゲーター検定」が、2007年から名称も新たにスタートしたものです。
公立美術館127館が加盟する美術館連絡協議会・読売新聞社・美術出版社が組織する「美術検定」実行委員会が主催する、民間資格です。
人類最古の絵は、いまから3万年前の旧石器時代、狩りの成功を願って描いた洞窟壁画に端を発するとされています。
そして21世紀の今日にいたるまで、世界中で無数の絵が描かれ、そのなかには歴史の試練を経て生き残った国際的評価の高い名画もあれば、誰からも顧みられることなく歴史の闇に埋没した作品もあります。
また、ある時代はまったく評価されなかったのに、死後数百年もたった後に突如スポットライトがあてられて、日の目をみることになった画家もいます。
いまのあなたの目にはどうということもない、ただの一枚の絵に過ぎない(笑)作品が、なぜ歴史の荒波に耐えて世界的名画としての評価を確立しているのか、知りたいとは思いませんか?
「絵は見るものでなく、読むもの」といっている美術評論家がいますが、その絵の鑑賞前に、関連する知識を学ぶことによって、これまで遠ざけてきた古今の作品群がまったく違ったものに見えてくることでしょう。
とりわけ西欧の歴史画・宗教画は絵の中には、当時の絵画上の約束事として、さまざまなメッセージが散りばめられているものが多くあります。
それらも知った上で、あたかも暗号を解読するかのように絵を読み解いたり、自分なりに推理を加えていくプロセスも、また楽しいものです。
素人目にはただ、線を何本か引いただけのように見えたり、あるいはペンキを撒き散らかしたようにしか見えない、現代美術における抽象絵画。
これまで「わからない」だけで済ませて抽象画や現代画を敬遠していた方も、この美術検定をきっかけにして、その意味や絵画史における位置づけなどを体系的に学んでみてはいかがでしょうか。
絵画を見ることは、絵を通じてその周囲の歴史や、その時代を生きた人々の考え方に触れることでもあります。
したがって美術に親しむことは、必然的に世界史や日本史、あるいは宗教史などの知識を深める方向にもつながります。
中高年におすすめしたい資格(13)~「歴史能力検定(歴検)」 でご紹介した「歴史能力検定(歴検)」や、中高年におすすめしたい資格(7)~「世界遺産検定」 でご紹介した「世界遺産検定」などと、コラボで資格取得を目指すのもよいですね(中高年 資格取得の視点(4)~単発でなく、セット(組み合わせ)取得を ご参照)。
美術検定は、もちろん再就職やアルバイト収入などに直接につながる類の資格ではありません。
しかし深刻な経済的不況が続くなか日々の生活に精一杯で、ともすれば心の余裕を失いがちな中高年世代にとっては、絵をみることそして数多くの美術作品に触れることは、生涯にわたって楽しむことのできるひとつの喜びになるはずです。
金銭的にも、美術館の入館料や好きな画集代くらいで楽しめますし、それほどお金のかかる趣味になることもありません(もっとも趣味が高じて、世界各国の美術館めぐりにハマる方なども少なくないようですが)。
美術検定を通じて得た体系的な知識によって、一枚の絵を見る楽しさがきっと何倍にも広がることでしょう。
「美術検定」は1~4級まであり、4級はマークシート50問・3級はマークシート100問・2級はマークシート100問+穴埋め問題、1級は穴埋め問題と記述式問題のみとなっています。
3級と2級は『美術検定公式テキスト 西洋・日本美術史の基本』の掲載内容が主な出題範囲とされているので、まずはこの公式テキストを通読したあとに、それぞれの級に向けて用意された練習問題集にチャレンジしてみるのが、正攻法の試験対策になります。
また、美術アカデミー&スクールによる対策講座も開催されています。
1級は合格率が18.5%(2011年度実績)とさすがに難しくなっており、また合格には美術館史や教育普及活動の分野までを含めた、相当量の勉強が必要となります。
いずれにしても、現時点で美術にまったく知識のない方でも4級からステップアップしてたどりつく楽しみがあるものと、前向きにとらえたいですね。
・美術検定
【試験日】 11月上旬(受験要項 をご参照)
【受験資格】 特に無し(但し1級は、2級取得者のみ受験可能)
【合格率】 4級 96.8% 3級 68.8% 2級 38.6% 1級 18.5%(2011年度実績)
【問いあわせ先】 「美術検定」実行委員会事務局