福祉住環境コーディネーターの資格は、建築会社や住宅リフォーム会社が社員に取得させることが多いようです。
中高年世代にとってはこの資格もまた、これだけで食べていける類の資格ではありません。
しかし、離れてあるいは近隣で暮らす高齢の両親のこれからをなにかと気にかけている中高年世代の方にとって、高齢者の住まい・住宅改修に関わるこの資格を持っていて損になることは、決してありません。
高齢者は一般に、健康なうちは住み慣れた自分の家で過ごすことにこだわりますが、高齢者の家庭内事故は年々増加しており、その死亡者数は交通事故を上回るとすら言われています。
老齢の親がふたり暮らし・ひとり暮らしをしているという方にとって決して他人事ではなく、その「家庭内事故の防止」は予防的に重視すべきことなのです。
万一、事故で骨折したことをきっかけに介護が必要になってしまうと、本人の生活の質が著しく低下するのみならず、あなたやあなたの家族の生活もそれに巻き込まれていくことになります。
適正な住宅改修などでそのリスクを大きく減らせるのであれば、関係者の人生における時間・費用面のトータルコストも下げることが可能になるのです。
国民生活センターに提供された事故情報によると、65歳以上の高齢者の家庭内事故の割合は、全体の77%(2010年~2012年)に達しています。
事故内容のうちで打撲傷・挫傷・骨折」が全体に占める割合は5割強であり、その主な事故原因は「階段や床での転倒・転落」によるものとなっています。
高齢者の家庭内事故が起きる遠因のひとつに、「長年住んだ古い一軒家で愛着もあるし、いまさらバリアフリー化のための改装をしても仕方がない」と、当の高齢者自身が考えがちであることがあげられます。
肝心の本人が、住宅内の階段や居室間の段差、あるいは台所・浴室など事故が起きやすいとされる箇所の改善をする気がない以上、現実的にこの問題に対処できるのは、家族をおいて他にないはずです。
かりに老親の住まいのバリアフリー化を考えることになった場合、業者まかせにしていてるだけでは、満足のいく結果にならない可能性もあります。
まして最近はずさんな工事で高額な請求を行う悪質リフォーム業者の存在がマスコミで報道されており、消費者として油断ならない風潮もでてきています。
このようなときに必要なのは、「住宅改修を発注する側が知識武装すること」です。
そのために最適なのが、東京商工会議所が実施する「福祉住環境コーディネーター検定試験」です。
すでに試験回数47回、年間受験者数も2万人強を数える、「高齢者や障害者に対して住みやすい住環境を提案するアドバイスを行うための専門知識」を問う資格です。
3級~1級までありますが、できれば2級までは取得しておきたいところです。
可能ならば「福祉用具専門相談員」や「ホームヘルパー」の資格をあわせ持っておくと、広範囲の福祉住環境の専門知識をベースとして、住宅リフォーム業者などとの打ち合わせや交渉事も、ある程度自信をもって行えるようになるでしょう。
そして必ずしも親のためだけでなく、「自分自身が将来高齢者となったときの住まいはどうあるべきか」を考える際においても、役にたつはずです。
近隣の高齢者や友人に相談された場合に、ある程度の対応ができるようにもなるでしょう。
1級については、2022年度の試験から多肢選択式と記述式の2つから成る「CBT方式(全国のテストセンター設置のパソコンにて受験)」に移行されます。試験時間も従来の120分から、90分に短縮されます。
2級と3級はCBT方式に加え、「IBT方式(インターネットを通じ受験者自身のパソコンで受験する試験方式)」も用意されています。出題形式は多肢選択式で、試験時間は90分です。
3級はそれほど難易度も高くありませんので、まずは3級から勉強をはじめてみることをおすすめします。
・福祉住環境コーディネーター検定試験
【試験日】 [第48回]7月22日~8月8日[第49回]10月5日~11月28日日[第49回・1級]11月1日~11月10日
【受験資格】 なし
【合格率】 17.7%(1級) 67.8%(2級) 66.1%(3級)[2021年度 全国分実績。試験結果データ 参照のこと]
【問いあわせ先】 東京商工会議所検定センター