認知症の患者数は2010年時点で200万人超。そう遠くない2020年に、300万人を超えるとの推計もあります。
65歳未満の発症、いわゆる「若年性認知症」の患者数も増加の一途で、全国で3万人以上とも推定されています。
認知症はいわゆる「アルツハイマー病」と「脳血管障害」が、原因の8割を占めるとされます。
中高年世代は、高齢の親も歳相応に物忘れはよくするもの、認知症ではないから問題ない、ましてや自分自身が認知症になることなど想像もしていない…漠然とそう思っている方が、決して少なくないでしょう。
しかし今日の日本社会は、もはや「認知症について無理解でも構わない」という状況では無くなってきています。
認知症の専門施設が乏しい地方では、すでに一人で生活する認知症の高齢者がかなりの数に達している地域も珍しくありません。
近隣の住人が火災やトラブルを心配するのをよそに、本人が状況を理解できないため行政の介入も難しくなっています。
生活の関係上やむを得ず車を運転している初期認知症の患者も決して珍しくなく、起因する事故も少なくないことから、社会問題化しています。
また「若年性認知症」ともなると、残念ながら仕事を辞めて治療に専念しなくてはならないケースが大半です。
万一自分の職場の部下や同僚が若年認知症であることがわかった場合、あなたは正しい知識と理解を持った上で、彼らに接することができるでしょうか?
このように、たとえ自分や家族が認知症と無縁であっても、誰もが自分の暮らす地域・職場・社会で認知症の方とのコミュニケーションをとったり、適切な対応を考えなくてはならない時代になっています。
家族が認知症になった場合、一番の問題は、家族がその現実をなかなか認めたがらないことから結果的に病院で治療を受けるのが遅れ、本人の症状が悪化することだそうです。
家族の認知症への無理解から、本人の外部との接触を禁じ、家に閉じ込めてしまうことによって本人の体力を奪い、症状を悪化させてしまう事例も少なくありません。
認知症という病気についての正しい理解を有していれば、本人にとっても周囲にとっても、状況に応じた最適な対応をとることができるはずです。
家族と自分の人生のこれからを見据え、将来の万一に備えるためにも、資格を通じて認知症の基本について学んでおくことには、大きな意義があります。
認知症関連の民間資格は、すでにいくつも存在しています。
認知症関連の資格として知名度の高いものに、日本認知症ケア学会による更新制の「認知症ケア専門士」認定試験があります。
ただし「認知症ケア専門士」は、試験実施前の10年間で「3年以上の認知症ケアの実務経験」が必要です。
また、日本認知症予防学会が平成26年度から試験実施を予定する「認知症予防専門士」もあります。
こちらは「認知症の予防」が対象ですが、受験には「認知症予防関連施設で3年以上の実務経験」が要求されます。
また同じく認知症に対する高度な専門的理解が求められる資格として、日本介護福祉士会による「認定介護福祉士(仮称)」が、介護福祉士の上位資格として創設される予定です。
こちらも受験資格として7~8年の介護の実務経験が要求される、ハードルが高いものとなりそうです。
一定の実務経験が必要な資格ではなく、一般生活者として認知症高齢者と接する機会のある中高年世代が取得しやすいものとしては、以下の2つがあります。
ひとつは一般社団法人 職業技能振興会が2010年度から実施している「認知症ケア指導管理士(初級)」です。
初級の難易度はそう高くなく、認知症という病気についての全般的理解が得られる資格と考えていいでしょう。
もう一つはここでご紹介する、一般社団法人 日本認知症コミュニケーション協議会が実施する民間資格「認知症ライフパートナー検定試験」です。
「認知症ライフパートナー検定試験」は、認知症に対する基本的な知識と共に、「アクティビティ」の手法による認知症ケアを重視していることが特長です。
最近の認知症介護の現場では音楽やダンス・調理の手伝い・アロマセラピーなどを利用した療法や、専門家が介入しての「回想法」などが行われていますが、これらが「アクティビティ・ケア」の具体的事例です。
言葉によるコミュニケーションが十分機能しない認知症の方々にとって、重要な役割を果たすのが「アクティビティ」です。
より高度なアクティビティの知識・認知症の方との高いコミュニケーション能力を得ることをめざす試験であり、認知症に詳しい人材として地域で求められる存在になることが期待されています。
受験者は10代~70代と幅広い年齢層に渡り、一般受験者数も既に医療・福祉関係の受験者数と肩を並べています。
「認知症ライフパートナー検定試験」は、「基礎検定」と「応用検定」に分かれています。
「基礎検定」では、認知症の基本的な知識・認知症ケアの手法を、基礎から学びます。
「応用検定」は基礎検定での習得内容に加え、高齢者が暮らしやすい住まいづくりについて具体的なアドバイスができるようになる点が、基礎検定との大きな違いになります。
いずれもマークシート方式による筆記試験で、100点満点中70点以上で合格です。
それぞれ公式テキストと通信講座が用意され出題範囲が確定しているため、受験準備がしやすい資格になっています。
・認知症ライフパートナー検定試験
【試験日】 7月・12月(基礎検定および応用検定)
【受験資格】 なし
【合格率】 74.4%(基礎検定、第6回)18.3%(応用検定、第4回)
詳細は「検定試験レポート」を参照
【問い合わせ先】 一般社団法人 日本認知症コミュニケーション協議会 検定事務局